コロナウイルスは過去20年間にSARSと中東呼吸器症候群(MERS)という二つの大規模パンデミックを引き起こした8,9. 主にコウモリに存在するSARSr-CoVは、将来的に病気の大流行を引き起こす可能性があると一般的に考えられている10,11。 今回、我々は、中国中央部の湖北省武漢市で発生した未確認の肺炎疾患による一連の症例について報告する。 この疾患は、地元の海産物市場から発生し、202012年1月26日現在、中国国内で2761人が感染、80人が死亡し、さらに10カ国で33人が感染するまでに大きく拡大しました。 これらの患者の典型的な臨床症状は、発熱、乾いた咳、呼吸困難(dyspnoea)、頭痛および肺炎です。 発症すると、胸部CT(コンピュータ断層撮影)画像による肺胞損傷により呼吸不全が進行し、死に至ることもあります。 本症は、体温の上昇、リンパ球および白血球の減少(白血球は正常値を示すこともある)、胸部X線写真における新しい肺浸潤、3日間の抗生物質治療後も明らかな改善が見られないなどの臨床症状から、臨床医がウイルス性肺炎と判断したものであった。 初期の患者のほとんどは、元の水産物市場との接触歴があったようですが、現在ではヒトからヒトへの接触によって感染するまでに進行しています。
発生初期に武漢金銀壇病院の集中治療室に入院した重症肺炎患者7名(うち6名は海鮮市場の販売員または配達員)の検体を武漢ウイルス研究所(WIV)の検査室に送り、原因病原体を診断した(拡張データ表1)。 CoVを研究している研究所として、我々はまず、SARS感染と同じ環境である冬と市場で発生したことを考慮し、pan-CoV PCRプライマーを用いてこれらの検体を検査した13。 その結果、5つの検体がCoVのPCR陽性であることが判明した。 気管支肺胞洗浄液(BALF)から採取した1検体(WIV04)については、次世代シーケンサーを用いたメタゲノム解析により、病因となりうる物質を同定した。 10,038,758個のリードのうち、ヒトゲノムからのリードをフィルタリングして残った1,582個のリードが、SARSr-CoVの配列に一致した(図1a)。 de novoアセンブリとターゲットPCRにより、SARS-CoV BJ01 (GenBank accession number AY278488.2) と79.6%の配列同一性を持つ29,891塩基対のCoVゲノムを取得した。 このゲノムに全リードを再マッピングすることにより、高いゲノムカバレッジが得られた(Extended Data Fig. 1)。 この配列はGISAID (https://www.gisaid.org/) に提出されている(アクセッション番号 EPI_ISL_402124)。 世界保健機関(WHO)が付けた名称に従い、我々はこれを新型コロナウイルス2019(2019-nCoV)と仮に呼ぶことにする。 その後、次世代シークエンスとPCRを用いて、さらに4人の患者から互いに99.9%以上同一の2019-nCoVの完全長ゲノム配列(WIV02、WIV05、WIV06、WIV07)(GISAIDアクセッション番号 EPI_ISL_402127-402130)を得た(拡張データ表2)。