症例報告

1999年6月,52歳男性が2日前に梯子から転落し,呼吸困難を訴えて来院した. 評価では大きな胸水があることが指摘された。 胸腔穿刺を行い、1200ccの血性胸水が貯留された。 その後48時間、患者は安定した状態を保ち、臨床検査の結果も正常であった。 ヘパリンを皮下投与し、歩けるようになった。 退院時、患者は倒れ、無反応で低血圧であった。 緊急に挿管し、心肺蘇生を行った。 両胸部チューブを経験的に留置したが,気胸・血胸は確認できなかった。 吸入酸素量(FIO2)100%、胸部X線写真に異常はなかったが、動脈血ガス濃度は高度低酸素血症(酸素分圧55mmHg)を示していた(Fig.1)。 心電図では心筋の虚血や不整脈は認められなかった(Fig.2)。 ドパミンと塩酸フェニレフリンを追加して心拍出量と血圧をサポートしたが、患者の状態は悪化の一途をたどった。 低酸素状態が続き、深部低血圧(収縮期血圧<70mmHg)になった。 肺塞栓が疑われたこの患者の極めて悪性な経過から、緊急の介入をしなければすぐに死亡することが明らかとなった。 そのため、上記所見のみで手術に踏み切った。 胸骨正中切開を行いながら、経食道心エコー図を撮影したが、右心筋緊張などの異常は認められなかった。 心肺バイパスを行い、主肺動脈を開胸した。 左肺動脈から巨大な血栓(4×1.5cm)が摘出され、両肺動脈から複数の小さな血栓が摘出された。 患者は心肺バイパスから離脱した。 術後はグリーンフィールドフィルターを装着し,術後11日目に良好な状態で退院した. 術後約半年後に受診した際も良好であった。

 写真やイラストなどを保持する外部ファイルのことである。 オブジェクト名は16FF1.jpg

図1 胸部X線写真に異常なし

図2 心電図に心筋虚血、不整脈を認めない

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